東京MEIWA相続サポートセンタートップ相続レポート > 一つの相続税申告で税理士が複数?

相続サポートセンターレポート

一つの相続税申告で税理士が複数?

2018年10月20日

お世話になります。税理士の山方です。
今回は、相続税申告を複数の税理士が行うケースについてご紹介します。

1. 相続税申告の際、税理士が複数いるケースとは?
通常相続税の申告業務は、相続人全員で一人の税理士に依頼して申告書を作成します。そこで作成された申告書に対して相続人全員で押印したうえで税務署に申告することとなります。

ところが同一の相続に対して税理士が複数存在し、それぞれ別の申告書を作成し税務署に提出するケースがあります。このケースが生ずる主な要因としては、相続人の間で遺産分割協議に争いがあるという事があげられます。

同じ相続財産に対して相続税を計算するわけですから、仮に別々の税理士が申告書を作成したとしても、理論上はそこで計算される税額は一致するはずです。しかし通常こういったケースの場合は、見解の相違などを理由に税額が一致する事の方が珍しいです。つまり同じ相続に対して金額の異なる二つの申告書が存在する事となります。


2. 税理士が複数いる場合のスケジュール
それでは複数の異なる申告書が存在する場合の申告スケジュールはどうなるのでしょうか?
相続税の申告及び納付は、相続発生から10カ月以内に必ず行わなければなりません。
これは、二つの見解の異なる申告書が存在する場合でも変わりません。つまり税務署には同じ相続に対して見解の異なる二つの申告書が提出され納税が行われる事となります。

税務署の立場としては、同じ相続に対しては認められる申告書は一つだけです。二つの異なる申告書が提出された場合は、「どちらかが間違っている」もしくは「二つとも間違っている」と判断せざるを得ません。この場合税務署としては、一旦はどちらの申告書も受理はします。

しかしそのあと、相続人同士で話し合ってもらい統一した申告書を後日改めて提出してもらう事になります。(場合によっては、税務署が調査という形で介入します。)
そこで税額の変動分について不足であれば加算税を含めて払ってもらいますし、払い過ぎであれば還付という事になります。

結局、申告期限までに相続人同士で申告書の折り合いがつかなければ、申告納付については二度手間となってしまいます。また、少なくともいずれか一方の申告書は間違いという事になるため、税務署への心象も悪くなります。

実務上は、異なる申告書が複数存在する事に税務的には何のメリットもない為、相続人合意の上で最終的に双方の税理士同士が話し合い、申告書の金額は統一するというケースも多いです。


3. 本来、税理士が複数いる意味はない?
そもそも相続税の申告というものは、相続人が共同で税務署に対して行う税務上の行為です。これに対して遺産分割協議というものは、相続人同士が話し合ってそれぞれの相続財産を決めるという民法上の行為です。
言い換えれば、民法上の相続人同士の争いと、税務署に対する申告納付という行為は、根本的に別物という事です。

税務署としては、税法に準じた形で①「相続財産として計上すべきものをすべて計上」したうえで②「税務上の評価方法に従った評価」が行われた申告書の提出がなされれば文句をいう事はありません。

そして税法に準じて計算していけば、理論上はだれが計算しても税額は必ず一致するはずという事です。
(実際は税理士の経験値等により異なる事が多いです。)

税務上の金額に対してはその過程においてどんなに見解が異なろうとも、最終的な決定権を持つのは基本的に税務署です。二つの異なる申告書の提出があると、税務署側にしてみれば必ずいずれかが間違いであることが確定している為、署内でのチェックが厳しくなる事が予想されます。それならば初めから知識や経験のある税理士に一本化した方が、納税面で有利になる可能性が高いというだけです。

さらにいうと、税理士が計算するのはあくまでも税務上の金額なので民法上の時価とはそもそも異なっているという事です。「税務上の時価」は税法ルールにより計算しますが、「民法上の時価」は明確なルールは存在しない為、別途協議により決定されます。

違和感があるかもしれませんが、「税務上の財産評価額」と「民法上の財産評価額」が異なるというのは普通のことなのです。税理士が計算する財産評価額はあくまで税金計算を目的になされます。
その財産評価額は参考として「遺産分割協議のたたき台」になる事はあっても、「遺産分割協議を決定づけるもの」にはなりえないという事です。

税理士は相続人全員(納税者)と税務署の間に立って税金の計算をするのが業務です。相続人同士の争いがある場合は、相続人と相続人の間に入るのはそれぞれの弁護士の仕事になります。


4. それでも税理士を分ける理由
上記の通り、本来は遺産分割協議でもめたからと言って税理士をそれぞれに立てる意味はありません。しかし実務上はそれぞれに税理士を立てるケースも多いです。
一番大きな理由は、相手方の立てた税理士が信用できないという事が大きいかと思います。

本来税理士は、相続人が争っていたとしても中立でないといけません。
どちらか一方に有利になるような発言や行為は職務内容から逸脱した行為です。実際、相続人に誤解を与えるような事があれば、悪質な場合税理士自身が相続人から訴えられるケースもあります。そのため税理士自身も対応には細心の注意を払って臨むはずです。

しかしながら相続人の方々にしてみれば、仮に税理士が一方に対して有利になるような発言や行為を行ったとしても、それが越権行為か否かを判断する事は難しいでしょう。
(税理士の立場で言わせてもらうと、そんな事をする税理士はいないと信じています。)

そうなると、やはり自身も信頼できる税理士を別に付ける、もしくは税法にも詳しい弁護士に依頼するという形になるかと思います。
(但し税法自体が専門性の高い分野のため、税法にも詳しい弁護士というのは中々いません。税理士と弁護士両方に依頼というのも珍しくないです。)

また遺産分割で争っている場合は、最終的に申告内容についても相続人同士の意見が食い違う事があります。(税務上デメリットしかないと理解していてもです。)

こうなると税理士としては、利益相反の可能性があるため、双方からの申告依頼は受けられず、どちらか一方の依頼のみを受けざるを得ない事になります。


最後に
相続という普段は関わらない事態に直面して、その金額が多額となれば不安になるのは当然と思います。またケースによっては不信感がつのる事もあると思います。一人で悩んでも解決の糸口は見つかりません。まずはお気軽に専門家にご相談することをお勧めします。

 

カテゴリ : 相続トラブル 遺産分割 相続税 相続発生後

筆者紹介
山方 越志

初めまして。税理士の山方と申します。
私は、これまで相続税の申告に50件近く携わらせ頂いてます。 相続対策も含めますと少なくとも100件以上にはなるかと思います。これは、税理士としても相当な案件数と自負しているところです。
相続実務においては、相続税の知識はもちろんの事、周辺税法・民法・社会保険料及び不動産といった様々な知識からの多角的な検討が必要となります。
その中でも、とりわけ重要なのはご家族皆さんのお気持ちの部分だと、仕事のたびいつも痛感させられます。

節税のアドバイスは当然のこととして、何よりも「その人の大切な物が大切な人に引き継がれていくことのお手伝い」をモットーに業務に携わらせて頂いております。

メールマガジン

相続に関するお問い合わせ・ご相談はお気軽に

相続用語辞典

相続税簡単シミュレーション

贈与税簡単シミュレーション

メールマガジン

全国相続サポートセンター

TOP