我々土地家屋調査士が、相続の関係でお世話させて頂く場合で多いのは、相続人の間で土地を分けあう為の分筆登記を行う時や、相続税の物納の為の土地の境界確定測量、地積更正登記を行う時です。
また、この分筆登記・地積更正登記を行う上で、前提として通常境界確定測量を行わなければなりません。
前回までは、基本的なお話しをしてまいりました。今回は、少し実務的なお話しをしたいと思います。
題になっている、~「昔、曲がった境界を、話し合いでまっすぐしたから今はもう大丈夫!?」~という声は、境界立会を行う際に時折聞かれます。
― 問題 ―
Q1番の所有者と2番の所有者は数年前話し合いにより曲がった境界線を直線にして、間にブロック塀を築造して、それぞれ長方形の土地として使用しています。当事者間ではお互いに納得していますが、何か問題があるのでしょうか?
― 選択肢 ―
①当事者間で合意されているので、登記上も問題ない。
②土地の境界は当事者間で変えられるものではないから、実体と登記が相違している状態と言えるので、問題がある。
正解は②です。
土地の境界(筆界)は当事者間が合意したからといって、当事者間で境界(筆界)を移動することはできません。
実体上の所有関係と登記の状態が相違していると言えますので、どちらかの土地を売却するときなど、問題が出てきます。
この場合、実体と登記を合わせるには、それぞれの土地の分筆登記と交換による所有権移転登記を行うこととなります。
(10年もしくは20年以上経つと時効取得という話も出てきます。)
現在、私はこのような問題がある土地の仕事を2件進行中です。
の内の1件はお隣様の協力がなかなか得られず、時間がかかっています。
なぜ、このような事が起きるかといえば、専門知識がないことや、知識があっても測量・登記費用を節約しようとしてしまうことだと思います。
土地を相続するときは境界問題も同時に相続することになりますので、過去にそのような交換の事実があれば、しっかりと経緯などを聞いておくことや専門家に相談することをお勧めします。将来の備えとなると思います。