令和4年8月12日、現行の成年後見制度について、法務省が2026年度までに民法などの改正法案の国会提出を目指して検討を始めました。
成年後見制度とは、認知症,知的障害,精神障害などによって判断能力が十分ではない方を保護するための制度として2000年にスタートした支援制度です。
本制度ですが、数年前から実際に利用している方々から様々な問題点が指摘されており、制度開始から20年経った今、具体的な改善点を踏まえての民法改正の動きが出てきました。
今回は、成年後見制度についてどのような改善点が検討され、どう制度が変わっていくのかをみていきましょう。
現行の成年後見制度の改善点
2000年の成年後見制度の発足以降、本制度について有識者会議などを通してより多くの人々に利用してもらえるような制度整備のための議論が行われてきました。
その中で本制度の改善点として、以下のような点が挙げられています。
(1)本人にとって適切な時機に必要な範囲・期間で利用できるようにすべき
(2)終身ではなく有期(更新)の制度として見直しの機会を付与すべき
(3)本人が必要とする身上保護や意思決定支援の内容やその変化に応じ後見人を円滑に交代できるようにすべき
※引用:厚生労働省 「成年後見制度利用促進専門家会議」第二期成年後見制度利用促進基本計画に盛りこむべき事項
上記のような改善が行われると私たちはどのようなメリットを受けられるのでしょうか。
改善によるメリット
(1)本人にとって適切な時機に必要な範囲・期間で利用できるようにすべき
本制度を利用することで、様々な手続きが円滑に進む半面、後見人への費用負担が親族に大きくのしかかります。
また、不動産の売却のみの対応のためだけに本制度を利用したいと考えても今後の費用負担を考えると、足踏みしてしまうケースも多いようです。
普段は本制度を利用していない方でも、このような突発的なタイミングで柔軟に成年後見制度を利用できれば、必要なときに必要な費用だけ払うだけで済むようになります。
(2)終身ではなく有期(更新)の制度として見直しの機会を付与すべき
現行制度では、一度後見制度を利用すると基本的に本人が亡くなるまで辞めることができないようになっています。
また、現行制度では、一度選任された後見人が最後まで継続することがほとんどです。
財産整理などの複雑な手続きについては専門的な知識を持っている弁護士や司法書士などの士業の方が後見人に適任ではありますが、そのような財産整理業務がある程度片付いてしまうと、単純な財産管理に対して多額の報酬を支払うこととなります。
利用者の財産状況や健康状態などを総合的に鑑みて、本制度を継続するかどうかの判断をすることで余計な報酬を払わずに済みます。
(3)本人が必要とする身上保護や意思決定支援の内容やその変化に応じ後見人を円滑に交代できるようにすべき
前段で記載の通り、後見人の変更ができず単純な管理業務に多額の報酬が発生するケースも見受けられます。
後見人を利用者の財産状況や、体調の変化に応じて、その状況にあった後見人を選任することで適正な支援を適正な人物が適正な価格で行うことができるようになります。
まとめ
今回、成年後見制度についてルールを改正しようとする動きが報道されました。
制度改正により問題点が解消されれば、制度として大きく前進するものと期待されます。
専門家会議でのこの検討による報告書は2024年にまとめる予定だそうです。そこから政府が法制審議会で議論した後、具体的な改正案を2026年度ごろに国会に提出する予定です。
実際に制度が大きく変わるのは少し先になりそうですが、改正されれば使い勝手の良い制度として広く利用されることになるでしょう。